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暗い、廊下だった。
所々に置いてある壷などの装飾品は、見る人が見ればかなり価値のあるものだということがわかるだろう。
屋敷としての規模も、かなりのものだ。
静かだった。
静かすぎる。これだけの屋敷となれば、使用人の数も多いだろう。
たとえ夜であっても、何人かは起きて仕事をしているはずなのに、人の気配は全くない。
その廊下を、1人の少女が歩いていた。
窓から差し込む月明かりに映し出された、まだどこかあどけなさが残る顔。
すらりと伸びた手足。長い漆黒の髪を後ろで緩く編んで垂らしている。
髪と同じ、漆黒のコートをはおり、コートの中もまた黒。
左側だけ長い前髪の隙間から、黒い眼帯が見える。
眼帯は、彼女の額と左頬すらも覆っていた。
闇色の廊下を、迷うことなく歩く。
足音や気配はなく、まるで幽霊のようだった。
ふと、扉の前で足を止めた。
金箔に縁取られた、豪華な扉だった。
ノックもせず、僅かに扉を開け、
「…任務完了」
言って、すぐまた扉をしめ、その場から立ち去った。
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