■壱■

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――― 「宮沢。」 医師控室に戻ってきた礼恩の後ろから、バスの声が彼を呼び止めた。 「?おぉ、相田。どうした?」 礼恩は振り返り、目の前に現れた男に笑いかけた。 男は礼恩よりも一回り体格がよく 肩下まである黒髪をオールバックにして後ろで結わっている。 「これ、あんたの机の下に落ちていたぞ。」 相田はその大きな手に簡単に収まってしまうほどの物を礼恩に手渡した。 「おぉ、悪い悪い。さんきゅー」 「ソレ、あんたの患者の生徒手帳だろ?気をつけろよ?その子、名前から歳から色々書いてあったぞ。最近は個人情報がどうとか五月蝿くなってるんだ…」 「はーいはい、わかってるよ~」 礼恩は相田に背を向けてひらひらと片手を挙げる。
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