■壱■

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真琴は少し安心したようで、ベッド脇のイスに座るとあたりを見回した。 「それにしても、個室って高いんじゃないの?」 「うん…。でも、帰って来れない分だって、お父さんが個室でゆっくりしなさいって。」 「おぉ、リッチだね。」 「そんなことないよ。」 きょろきょろと周りを見ていた真琴の目が、あるところで留まった。 「ねぇ、これなんて読むの?」 「ん?」 真琴の目はベッドの脇にある私の名前の上に書いてある 主治医の名前に留まっていた。 「あぁ、"みやざわ れおん"。」 「へぇ~、変わった名前ね。」 「本人もだいぶ変わってるよ…」 私は礼恩の顔を思い出してため息をついた。 「髪の毛赤いし、無精ヒゲ生えてるし、オヤジだし…」 『…亜葵』 「っ…。」 礼恩の声が急に思い出されて、顔が赤くなる。
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