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「こんな所で、君の化石を見付けてしまうだなんて、考えもしなかったよ。」
私は、いつかの考古学者。遥か昔に、人々から忘れ去られた地球にぽっかりと開いた深い深い穴の底。偶然に任せるしか辿り着けないこの場所。寂しく孤独に開いた穴の中に、這い上がる事を拒み、留まる事を選んで君は、居たのだね。ずっと、呆れるぐらいに時が流れて行く程ずっと、君はここに居たのだね。
「なるほど。」
化石になった君の証を、私はただただ在り来たりな言葉で納得していくしかなかった。君が見たものを、君が聞いたものを、君が触れたものを、そんな君が感じて書き記した突拍子もない予測不能な君自身を、或いはこの空間でなら、予測出来るのかもしれない。と、少しだけ希望を抱きながら、私は君の化石を理解しようともがいていた。
「………。」
時に笑い。時に泣き。時に喜び。時に君の価値観を嫌悪して怒り。それでも私は、君の化石を全て受け止めようと、つまらない努力をしていた。
「そうだったのか!」
なぜ、人々がこの場所を記憶から消し去ったのか?その答えに辿り着いた時には既に、私は化石になっていた。そう、君が仕掛けたこの罠によって………。
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