on sunday

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去って行くその後ろ姿を見つめ、ポケットの中に財布を入れた。 何処へ行こう? 腹はいっぱいだし。 ただただ、今はその所為で眠いけど。 「…うっし、隣町行くかー。」 こんな天気が良いのに、寝るなんて勿体無い。 線路沿いを歩いて行けば行けるんだから。たまにはそんな冒険チックな散歩も有りだろ?  線路沿いに歩く道は、途中から住宅街に入り、やけに田舎っぽい道になった。 線路と道路を仕切るのは、俺の胸辺りまでしかない木板で手来た柵しかなく、少し危ない気もする。 前方に見えるのは次の駅で、ホームには人がちらほらといる。このくらいの距離だったら、次の、また次の駅まで歩けるかもしれない。 「行ってみるか。」 知らない町に行くのは、ワクワクする。 こんな時、いつも隣には彼らがいた。 でも今は、いない。 大輝は今、アメリカに行っている。 高校時代に留学したいと話をされ、俺らは応援した。そして、卒業したと同時にサラリと行ってしまった。 怜は俺と同じ大学だけど、此処にきて運命も途切れたのか、クラスが違った。 同じ学科なのだけど、学科の人数が多過ぎて二組に分けられてしまったのだ。 その所為かあまり話す機会もなくなるし、しかも俺は寮ではなくなるし…。 たまにメールしたりするけど、怜は新しく始めたサークルで忙しいみたいだ。 今、この場に彼らが一緒にいたら楽しいんだろうな…。 そう寂しく思い、石ころを蹴りながら前へと歩く。 「会いたいな…。」 立ち止まって空を見上げれば、飛行機が左へと流れていく所だった。あれに乗って行ったら大輝に会えるかな。 そんな事を考えながら歩いていると、もう駅に着いてしまった。 前方から歩いてくる若い男二人組に自然と視線がいく。後ろに背負っているのは、ギターやベースだろう。 怜に言われて触った事はあるけど、全然弾けなかった事を覚えている。 そのときに一度教えてもらった音階は、もう覚えていない。  
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