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「…タイムリミット。怜が来た。」
笑って離れた彼の表情は穏やかで、外から来る何かから逃げる様に出て行ってしまった。
数秒後、プロペラの音が近づき、彼が行ってしまった事を知る。
空高く消えてゆくヘリを窓から見つめながら、俺はゆっくりと元の位置に座り、目の前に置かれた飲みかけの珈琲に視線を移した。まだ温かくて、湯気が出ている。
「……翔太?」
自分の名前を呼ぶ声に、ふと顔を上げる。
そこには、怜がいた。
「あれ………大輝は?」
「帰ったよ。」
「はぁっ!?アイツ何なんだっ…!」
「大輝に会いたかったら、もっと早く来れば良かったじゃん。」
「もろ練習中だっての、あそこ電波届き悪いし…。」
ぶつくさ言いながら、怜は先ほど大輝が座っていた場所に座った。
「あいつ今、アメリカにいんじゃなかったか?」
「なんか抜け出して来たらしいよ。」
「何しに?」
「…………俺に会いに?」
「…へぇ。アイツ阿呆だな。」
笑いながら、大輝の飲みかけた珈琲を啜る。
「…なんか……今日は、さ……俺…夢見てるみたいなんだ。」
「何だそれ?」
「今日は、大輝にも怜にも会うし…。」
「俺にはいつも会ってんだろ。」
「でも全然話しないじゃんか。やっぱクラスが違うとこうも話さなくなるんだなー…。」
「だってお前、休み時間直ぐいなくなるじゃねーか。いつも俺が探しに行ってんの知らねーだろ。」
は…?
初耳だよ、そんなん。
「だから俺、…お前に避けられてんのかと思ったんだからな?」
「………えっ、や……ないない!それはないって!!怜が来てくれてるなんて知らなかったんだ!!」
「休み時間、お前何処にいるんだよ?」
「………体育館。」
「運動してんのか?」
「うん、ドッヂボール。」
「……………翔太らしいな…。」
柔らかい笑みが、零れる。
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