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「なあ、医者って日曜日は仕事ないんだ?先生っ!急患です!とか連絡あったりする?」
「ああ、あるだろ。」
「へー…。」
大変なんだなぁと呟き、先を歩く伊藤に付いて行く。
とりあえず腹ごしらえという事で向かった先は、伊藤が勤める病院の近くの喫茶店だった。
螺旋階段を降りた先にある煉瓦造りの建物。
朝にも関わらず辺りが少し薄暗い為、扉にはほんのりとランプが灯っている。
「此処の朝飯が一番美味い。」
「マジで!?」
「ああ。」
ニッと笑みを浮かべながら、伊藤は扉を開けた。
「いやーーんっ!!!つかさーーっ!!!!」
突然、目の前から赤いドレスを着た女の人が突進してきた。
…いや、おとっ…、……オカマ…?
「……ああ、エリザベス。」
「ああじゃないわよっ!!あたしの事ほったらかして、何処行ってたのよぅ!!」
「大阪。」
「あらっ!どうせ浮気しに行ってたんでしょ!あたしがいながらっ…!」
伊藤に抱きついたまま離れないエリザベス。
俺はその光景を、一歩下がった場所から見ていた。
「……あら?そこの可愛いボーヤはだぁれ?」
「翔太。」
「ショウタ?……典の弟?」
「いや、恋―――」
「おー、マジで典じゃねぇか!久しぶり~!」
また、誰か現れた。
今度は、男に見える“男”が。
「おっ……可愛い子連れて来てんじゃん、君…名前は?」
「…翔太。」
「へぇ、翔太くんか~……典とデキてんの?」
「……ッ、はぁっ!?」
なに言ってんだ、この人!
普通初対面の奴にそんな事言わないだろ!!
「でっ、デキてねーよっ…」
「だよな~、こんな中坊と付き合ったら犯罪か!」
「なっ…!大学生だっての…!!」
なんだよ、こいつ!!
すっげー腹立つ!!
「ははっ、ムキになってやんの。……で?実際のところどーなわけ?」
カウンターに凭れかかった黒髪のロン毛野郎が、伊藤に問い掛けた。
「…さっきソイツが言っただろ?デキてねーって。」
「マジ?ただの知り合い?」
「ああ、そーゆう事。」
「…なら良かった。」
サンキュ。
短く礼を言ったロン毛野郎は、エリザベスにがっちり捕らえられた伊藤にウィンクを投げかけ、俺を見つめる。
「あいつら、積もる話あるみてぇだから俺と話さない?」
「は………?」
ちらりと伊藤を見れば、エリザベスにがっちりと抱きつかれていた。
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