21人が本棚に入れています
本棚に追加
「君らはいつから付き合ってんの?」
「………。」
「…ああ。因みにそのガキ、それからよく来るようになってさ…。金曜日に来るんだぜ。」
金曜日。
いつも帰って来るのが遅い日だ。
「ま、浮気されてたら可哀想だなと思って。忠告まで。」
「……ありがと。」
初めて聞いた話に、大好きな美味しいパニーニは喉を通らなかった。
いや、無理やり通したけれど味は分からなくて、とろけたチーズが舌にまとわりついている。
それをスープで流してから、俺は席を立った。
「ごちそうさま!」
「いいえ~、美味かった?」
「はい。すっげー美味かったです!お金…」
「いいよ、典の連れだし。また来てくれるだろ?」
正直行きたくない気持ちもしたけど、俺の気持ちを見透かしてるのだろう、彼はニヤニヤと笑みを浮かべている。
だから俺は、頷いた。
「おーい、典!」
「あー?」
「翔太くん飯終わった。」
「おー。」
離れないエリザベスを引きずりながら、伊藤はカウンターに来た。
「エリザベス、そろそろ…。」
「いやっ!今日離したらいつ来てくれるのよっ!!」
「また来るから…。」
「いーーーやーーー!!!!」
なかなか離れてくれそうにないエリザベスを見ていた翔太は、小さく溜め息を吐いた。
「いいよ、久々なんだから伊藤はまだ此処にいなよ。俺どっか行ってるから。」
「………え。」
「エリザベスさんの気持ち、なんか分かるし。」
と言いながら、一歩、また一歩と下がって扉に向かう。
扉に手をかけ開いたとき、伊藤の声がしたけど、聞こえないフリをして店から出た。
螺旋階段を上がり、地上に出た途端、扉を開く音が聞こえた。
コツコツと階段を上がってくる音から逃げるように、俺は早足でその場から立ち去った。
最初のコメントを投稿しよう!