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恋人のいなくなった空間。
ああ、やっぱり連れてくるんじゃなかったか……
流石にこの状況を見りゃ、引くわな。
「ジョージ…。」
「あ?」
俺はカウンターで寛ぐ彼に目配せをし、べったりとくっついたままのエリザベスを引き剥がしてもらった。
泣き喚くエリザベスから逃げるように扉を開けて外に出る。螺旋階段を駆け上がり地上に出て辺りを見渡したが、彼の姿はそこにいなかった。
「くそっ…」
すぐさま彼に電話をかけると、意外にも早く返事が返ってきた。
「何処?」
『漫画喫茶。』
「何処の?」
『駅前~。もう大丈夫?お金忘れたから来て?』
電話の向こうでヘラリと笑う声が聞こえる。てっきり怒って出ないと思っていたらの反応。
「すぐ行く。」
電話を切り、駅前の漫画喫茶へと急ぐ。
受付前で待っていると、あいつは現れた。
「金がないのに入るな。」
「だって急いでたんだから、しょーがないじゃん。」
「ったく………来なかったらどうするつもりだったんだ…。」
ぶつくさ言いながら勘定を済ませた伊藤に付いて行く。
「…翔太。さっきの事だが―――」
「なあ、次何処行く?」
「翔太。」
「こんな晴れてんだからさ、歩いて隣町まで行こうよ。どうせ何もする事ないしさ?」
へらへらと笑う相手の腕を掴み、引き寄せる。
「いった…、何―――」
「…悪かった。」
「………別に怒ってないよ、感動の再会みたいだったから気を利かしただけ。」
彼、凄かったね。
思い出し、楽しそうに笑う彼を見て安心した。少し見ぬ間に、こうして大人になっている。
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