もう泣かないで。

2/2
前へ
/19ページ
次へ
大好きな君が一番傍にいるの。 でも、その君が別の人を見ている。 「ねぇ、竜?」 「んー?」 「言わない、の?」 唐突な質問。 竜が傷つくのなんて、分かってた。 彼は少し苦笑いをして 静かに窓の外にある空を見上げる。 「あんな、千紗?…もう嫌なんだ。 アイツの哀しむ顔を見るの…。 だったらオレが痛いまんまの方がいいだろ?」 ははっ、と笑う君の笑顔が とても痛くて、痛くて。 「馬鹿じゃん、あんた。最高にお人よし。」 「いいよ、それでも。」 それでも、君は、彼女を愛しているんだね。 傍で見続けるだけでも、幸せなんだね。 「本当、馬鹿じゃん」 「はいはい。」 クシャッ、とあたしの頭を撫でる。 その笑顔を見なくても分かってた。 「それでいいんだよ、オレは。」 「うん」 仕方ないから。 彼女には大切な人がいるのを知っているから。 君が悲しい時は、あたしが傍にいるね。 今まで君がそうしてくれたように。 もう泣かないで。 あたしが、傍にいるよ。 見守り、続けるよ。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加