見掛け倒しの強さ。

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それを知っていてもなお、彼はあたしの傍にいた。 一種の奇人、とでもいおうか。 寂しい夜に、ただ利用した。 欲しい言葉を貰うためだけに利用した。 だから、傍にいなくても寂しくなんてない。 あたしの唯一の"逃げ場"だったけれど。 それは、もう必要なぃんだ。。。 「ね、アイツのコト、どんだけ覚えてる?もう忘れた?」 「記憶なんてモノは上書きされてく。忘れたよ、あんな奴」 記憶が消えていくことに恐怖を覚えたコトはあった。 "愛された"日々が糧になることを知っていた。 彼がどんどんあたしの記憶から消えていく。 だけれど、あたしは上書きされていく中で必死に 他の愛を求めたンだ。 忘れた、といったけれど。 違う・・・・"忘れようとしている"だ。 彼を思い出せば、あたしは弱くなる 脆く、すぐに朽ちる人形になってしまう。 「もう、あの人もあたしなんて忘れてるでしょ」 「そんなことないよ、あいつは・・・」 「どうだってよいよ。」 "あいつはあんただけを愛してる" 続きがわかったからあたしは話を中断させた。 そう、もうどうだってよいんだ。 あたしを愛でてくれたその手も。 名前をいとおしく呼んでくれたその声も。 あたしだけを見ていたその心すらも もう、あたしの手の届くところにはないんだ。 それでも、あたしは生きてく。 偽りの笑み、偽りの優しさ。 虚像のあたしのままで。 そして、願わくば・・・。 過ちを赦さないほど、苦しい痛みを。 あたしの全てに与えてください――。
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