素直な時間

4/10
34165人が本棚に入れています
本棚に追加
/209ページ
「じゃあ…少しだけ、横になりますね。」 「うん…疲れ取れたら適当に帰っていいから。私が起きなかったら、そこにかけてある鍵で扉しめて帰ってね。鍵はポストから中に。…じゃあ、おやすみ。」 私は、連絡だけ伝えると、布団を頭まで被った。 一生に一度あるかないかの…すごい一日だったな… 身体は疲労と睡眠を要求しているのに、神経が冴えていて、変な気分だった。 「美香さん?」 横の床から私を呼ぶ巧の声がした。 「加村さん…助かってよかったですね。」 優しい声音に鼻の奥が熱くなった。 良かった… 本当に良かった… 母のようにならないでくれた… 私は、鳴き声がこぼれないよう必死にこらえたが、どんどん込み上げてくる熱さに涙が止められなかった。 もう… なんでそんな風に言うのよ… 泣いてしまうじゃないか… 「…巧の馬鹿者!」 「え!?…ええ!?」 私の八つ当たりに巧がびっくりして飛び起きた気配がした。
/209ページ

最初のコメントを投稿しよう!