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「ねぇ、あんた、なんでそんな格好なの?」
私は思わず呟いた。
「いや…美香さんと食事するなら、この格好の方がしっくりくるかなって…」
相変わらず、体を小さくしてボソボソと巧が言う。
いろいろ世話になったお礼にと食事に誘ったのだが、職場近くで待ち合わせた場所に現れた巧は『達也』仕様だった。
ダークなスーツに黒のカッターシャツ胸元には気障ったらしい金のネックレス…
似合っているのだが…
姿は『達也』で仕草は『巧』で、かなりアンバランスだった。
別に格好なんてどうでもいいのに…。
まあ、レストランに入れないようなラフすぎる格好でも困るけど、こんなに極めてこなくても…
「まったく…」
私はため息をつきながら巧に近寄ると首のネックレスを指差した。
「それだけでも外して。」
「…はい」
従順に従って巧はネックレスを外して胸元のポケットに入れた。
「ボタンは上まで閉めて。メガネは?」
「はい…達也の時はコンタクトにしてるんです。」
こうやって見てみるとワイルド系でそこそこ整った顔立ちしてるのよね…
巧のときはボサボサ髪で分厚いメガネで、態度も仕草もかっこいいとは言えないから解らないけど。
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