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時の流れは残酷だ。
こちらがどんなに抗ったって、必死で願ったって、この温かい温室のような場所から出なければならない。
そうして通過儀礼でしかない卒業式と同時に、過酷な社会へと放逐されるのだ。
「大学行っても、友達だよね」
今にも泣き出しそうな顔で訴える友人に、私はくだらないと一蹴した。
本当は、人一倍感じる不安を諫めるように。
学校で過ごした日々が充実したものであればあるほど、新しい生活への不安は大きい。
私にとって、これは感傷的な言葉で表現できるような生温いものではない。
もはやこれは暴力だ。
泣き叫んでも、喚いても、見えない大きな力でねじ伏せられる不安と恐怖。
(ずっと子供でいれたらいいのに……)
厚い雲が張り巡らす灰色の景色を窓から眺め、心の中で呟いた。
将来に、希望がないわけではない。
それでも、今までのアタリマエが、掛け替えのない時間が失われてしまうのは、酷く悲しく寂しいことだ。
これから私の発言や行動は力を持つ。
同時にそこには、自分自身への責任が生まれる。
温かい毛布でくるまれるように、きらきらした宝物を無償で与えられるように、大人に大切に守られることは、もうない。
ここにきて、私は完全に独りになってしまうのだ。
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