お魚さん

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私もお母さんも、お魚さんが大好き。 私は台所に立ち、慣れない手つきで包丁を使って捌いていく。 お魚さんには腕がない。足もないし、肺もない。 「でも、鱗はあるんだよね」 私は呟きながら、包丁で模様を刻んでいく。 目は人間と違って、顔の横についている。髪の毛は要らない。体は綺麗な流線型だ。 生暖かい温度が伝わってくる。さっきまでは生きていたんだし、当然だ。とっても新鮮。まだピクピクと動いている。 「……やっとできた!」 私は満足そうに、まな板の上にある物を見つめた。我ながら、上出来だ。 笑いが込み上げてくる。口元が、別の生き物のように動いている。 右手で包丁を真っ赤な壁に突き刺した。壁の赤色はとても綺麗だ。私の上半身も、同じ綺麗な色をしている。 私は、まな板に横たわるものに向かって静かに話しかけた。 「私を虐めるからだよ、おかあさん」
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