45人が本棚に入れています
本棚に追加
私もお母さんも、お魚さんが大好き。
私は台所に立ち、慣れない手つきで包丁を使って捌いていく。
お魚さんには腕がない。足もないし、肺もない。
「でも、鱗はあるんだよね」
私は呟きながら、包丁で模様を刻んでいく。
目は人間と違って、顔の横についている。髪の毛は要らない。体は綺麗な流線型だ。
生暖かい温度が伝わってくる。さっきまでは生きていたんだし、当然だ。とっても新鮮。まだピクピクと動いている。
「……やっとできた!」
私は満足そうに、まな板の上にある物を見つめた。我ながら、上出来だ。
笑いが込み上げてくる。口元が、別の生き物のように動いている。
右手で包丁を真っ赤な壁に突き刺した。壁の赤色はとても綺麗だ。私の上半身も、同じ綺麗な色をしている。
私は、まな板に横たわるものに向かって静かに話しかけた。
「私を虐めるからだよ、おかあさん」
最初のコメントを投稿しよう!