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「ねぇ、ロックオ…じゃなかった、ライル」
私は、まだ慣れない呼び方で隣にいる彼の名を呼んだ。
「まーだ慣れないのか?アニュー。結構まぬけなんだな」
「あ、ひどい!」
そう言って、彼は笑う。私をからかって、でも、一緒に笑顔にしてくれる人。
私がこのソレスタルビーイングに来て、まだ慣れない頃、初めて私に興味を持ってくれた人、それがライルだった。最初は軽い男なんていう印象もあった。けど、私を名前で呼んでくれて、彼も本名を明かしてくれた。ほんの些細なことだったけど…私にとっては、とても嬉しいことだった。-たとえ、これから起きることを分かっていても。彼と親しくなればなるほど辛くなることを分かっていても。
「アニューは、ロックオンの方が呼びやすいのか?」
それから何度か名前で呼ぼうと努力しているのだけど、やはり慣れないためか、どうしてもコードネームで呼びそうになってしまう。
「そ、そんなことないわ。ライルの方が短いし、親しい感じがして嬉しいし…あ」
つい、口を滑らして本心をしゃべってしまった。顔が熱くなるのが分かる。
(あ…相手は、人間なのよ…。まさかこの私が、そんな気持ちを…)
「お、なんだなんだ。意外と俺に興味あったりするわけだ?」
「そ…」
…いきなりだった。気付くと彼の顔がすごく近くにあって、息をする間もなく、唇が塞がれる。
「!!」
私は無抵抗のまま、動くことができなかった。
しばらくして、熱を持った唇が離れていく。私は何が起きたのか、いまいち理解できなくて、でも彼は優しく、自信あり気に微笑んだ。
「実はさ、俺もなんだよね。お前に興味がある」
唐突すぎて、言葉が出ない。
「…アニュー、付き合わないか」
「え…」
まだ、私が興味あるなんて言ってないのに、強引な人。でも、言われるとさらに気づいてしまう。この、淡い恋心に。
それが禁断の果実だとしても。いけないことだとしても。私は、彼に嘘をつくことができなかった。
「…はい」
「お、本当に?よかった、断られたらどうしよかと思ったぜ?」
彼の笑う顔が、私の目に焼き付く。
「アニュー、認めたからには、逃がさないからな?」
そう言って、彼はぎゅっ、と私を強く抱き締めた。
「……!」
見た目よりもさらに筋肉質で、男らしい腕の中で、私の鼓動は聞こえそうなくらい波打った。
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