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「うおっ!アル、どうしたんだよその顔!!」
ブレストが僕を見つけて心底驚いた顔をした。その隣で、エリクも僕を心配そうに見つめている。そりゃ驚きも心配もするだろうね、顔半分血まみれだし。
「どうしたんだじゃないだろ!」
僕はわざと膨れてみせた。
「すぐに助けてくれるって言ってたのにさぁ…」
「すまん。悪かった」
ちらっと横目で見やると、エリクが素直に頭を下げている。あんまり申し訳なさそうにしてるのでこっちが驚いてしまった。それだけ心配してくれてたって事なのだろう。
「一応、離れた所から見張っていたんだけど…途中でお前を見失ってしまったんだ」
「そーだぜ、お前こそ今まで何処にいたんだ?」
ブレストの率直な質問。
僕は一瞬考えて、答えた。
「いきなり突き飛ばされて、ぶっ倒れて、気を失ってた」
するとブレストは、目に見えてがっかりした様な顔をする。
「はぁ?じゃぁ例のバケモンは見てねぇのかよ!」
…なんだそりゃ。僕のことよりも噂の化け物さんのが心配だったって事か、こいつは。怒るよりも呆れてしまった。
何か言い返そうと思ったけれど、エリクと顔を合わせて苦笑するだけにした。今は怒鳴るよりも、さっき別れた妖精の子のことを考えていたい。
――あの子は、旅をしているのだと言った。
何の旅なのかはよく解らなかったけれど、世界を巡って成長するのだそうだ。しかし今回はあの狼を見つけてしまい、仕方なく此処にとどまって狼を守っていたらしい。
「あ。そうだ。」
僕は肩に提げていた鞄を開けた。
「どうしたんだその犬!」
ブレストが驚いて声をあげる。それを、エリクが笑いながら訂正した。
「犬じゃなくて狼だよ、ブレスト」
そう、あの子が守っていた狼。このまま此処にとどまっていては自分は成長できないというので、僕が代わって面倒を見ることを引き受けたのだ。
「飼うのかお前…狼なんか」
「うん、だって怪我してるし。しばらくでも面倒見ないと」
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