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思わずエリクと顔を見合わせる。エリクはそのまま「勘弁してくれよ…」と小さな声で呟いた。
全く、同感。
「嫌に決まってるだろ!こんな痛い思いしたんだから!また明日なんて絶ッ対イヤだからな!!」
僕は大きな声で言って、ブレストの背中を叩いた。
それに、また明日行っても無駄足だ。だってその肝心の『バケモン』は旅に出てもう居なくなってしまったんだから。
「いってーなぁ!何すんだよアル!」
ブレストがお返しとばかりに僕の肩を叩いた。
「こらブレスト!アルは一応怪我人なんだから少しはいたわれ!」
するとすぐに、『生真面目』エリクがブレストの腕を引っ張る。
「ちぇ、お前っていっつもアルの味方すんだもんな」
「当り前だろ。俺はいつでも正しい方の味方だ」
ブレストのブーイングに、エリクは事も無げに言った。もちろんブレストは顔を赤くして言い返す。
「何だと!?じゃぁ俺は正しくないってのかよ!」
「俺にはそう見える」
「てめぇ!クビにしてやる!」
怒鳴りながら、背の高いエリクに飛び掛った。エリクの方は、楽しげに笑いながらひょいひょいと軽やかに逃げる。
「俺は優秀だからクビになんてされないね!」
「んじゃぁ減給だ減給!!」
「やれるもんならやってみろ我侭王子!」
退屈だったはずの今日が、こんなに楽しい一日になってくれて良かった。これもひとえに、『我侭王子』のお陰なのかもしれない。久しぶりに充実した一日だったな。
僕はじゃれあいながら追いかけっこをしている二人の後を歩きながら、叫んだ。
「全く!二人とも仲がいいね!」
なんだか無性に笑いたくなった。
END
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