日帰り冒険記

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あ、そうそう。申し遅れました、僕の名前はアルベルト。この小さな国の城下町で、しがない絵描きなんかしてます。見た目は…面倒くさくて伸ばしっぱなしの金髪に緑の瞳、華奢で弱そうってのがちょっとコンプレックスかな。でもまぁ、それなりに普通に、平和に暮らしてます。 絵は風景画が得意だから普段は写生に出かけたりしてる。でももともと面倒くさがりだから、色々理由を付けてはサボってばかりだ。 あぁ、でも今はサボりたくて絵を描かないわけじゃないからうずうずする。 ――ホント、誰か遊びに来ないかなぁ。 まさにそう思ったとき。 「アル!居るんだろ、開けてくれ!!」 乱暴にドアを叩く音で、だらだら寝そべっていた三人掛けのソファから飛び起きる。…この声は――。 「おはよう。どうかしたの?」 「どうしたもこうしたも…とにかく聞いてくれよ」 ドアを開けると、そこには狼狽しきった表情の大男(とは言っても別に身の丈三メートルとか、そういうんじゃない)が立っていた。 何だか様子が変だ。僕は彼を家の中に入れた。 とりあえずソファに座らせてお茶を出して、彼の正面に腰掛ける。 「で、エリク。何があったの?」 僕が彼に聞くと、彼は一口お茶を飲んで、言った。 「あいつだよ…あの困った王子様。」 この大男(くどいようだけど、大男と言っても彼の身長はせいぜい190センチくらいだ。まぁ、十分大きいけど)の名前はエリクソンという。愛称はエリクだ。髪の色は収穫時の麦の穂の様な色をしていて、瞳はくすんだ金色。根は優しくていい奴なんだけど、少々短気で神経質な所がある。今回もきっと何か短気を起こして失敗したのかと思っていたのだけれど。 「王子様って…」 エリクの言った事を繰り返した。僕はそいつに心当たりがある。エリクはため息を吐いて、頷いた。 「そう、ブレスト王子だ」
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