日帰り冒険記

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――風が吹いていない。 さっきまで気持ちの良い風が吹いていたのに、それがぴたりと止まっていたのだ。いや、これは風が止んだというよりも空気が固まって凍り付いているかのよう。 それに気がついた途端、周りの空気がじっとりと重く感じられた。湿度の高い、じめっとした空気が纏わりついてくる。急に鳥肌が立ち、それだというのに額に汗が浮いた。 それだけじゃない。さっきから妙な気配まで感じる。 これは、確かに変だ。 僕は慌てて辺りを見回した。何も見えない。 「エリ――」 不安に駆られてエリクを呼ぼうとしたその時、いきなり目の前がぶれた。背中に強い衝撃。僕はそのまま前に吹っ飛ばされた。 あまりにもふいうちだったので、前のめりに倒れそのまま思いっきり地面に頬をこすってしまう。 か……っ、かなり痛いぞ。こんちくしょう。 泣きそうになりながらも急いで身体を起こす。と、何かがぼたっと地面に落ちた。赤い、何だこれ。 って、これ血じゃん!血ィ出てら!血!!!
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