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「智ぉ…早く起きなさい。」
2階にある部屋で寝てるオレを下の階から母親が声を掛けている。
(ん?朝かぁ…。)
冷え切った部屋に、朝日が差し込む。
寒いので、まずは布団に入ったまま朝の一服。
(あっ!?)
ふと気付いたオレが手にしたのは携帯。
でも着信は無い。
(…いきなり電話はして来ないよなぁ。
まっ、今日も会えるから良っか。)
特にそれほど落胆する事も無く、吸い終えたタバコを消し、着替えてから朝食を食べに階段を降りた。
(さて、今日も恵利さんに会うのが楽しみだ。)
人々にとって苦痛な朝も、今のオレにとっては受け入れ易い。
そして、携帯に登録された初めての女性名も、今の幸せの1つだ。
そんな…目的がある一日は、時間も早く過ぎ、バイトの時間に迫る。
(少し早いけど、コンビニ寄ってからバイト行くか。)
愛車のママチャリに跨がり、日が傾きかけの夕方、家を後にした。
相変わらず人が多い浅草駅~雷門を抜け、上野駅に着く。
そして毎度の事ながら、胡散臭い外人が偽造テレカを勧めてくる。
軽くあしらいながらもアメ横を通りバイト先に着く。
仕事をやりながらも、前方にある店に居る女性の姿を探す。
(やっぱり寒いから、店の奥の方に居るのかな…。)
行き交う人の間を縫う様に視線を送る。
…そしてある事に気付く。
(オレ、恵利さんの事…
好きなんだなぁ…。)
人生で初めて実感する恋心。
…そぅ、これがオレの初恋。
ここから、募る思いは加速していく。
《COUNT DOWN 16》
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