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「そう言えば智君て、いつから働いてるの?」   「12月の頭からです。」   「やっぱそれ位だよね。」   「はい。」   「うちの店の子達の中でも噂になってたよ。」   「噂…ですか?」   「うん。何か…よさ気な男の人が働きだしたって。」    「…そ、そうですか。」   「初めて来た時も話し掛けられたでしょ。」   「はい。」   「ふふっ、話し掛けた子… 朝比奈って言うんだけど、 〈来たから話し掛けて来る。〉 って言ってね、智君のトコに行ったけど、 〈逃げられた。〉 って笑ってたよ」   「いや…何か気まずくて。」    「そうなの?…何で?」   「な、何となくですね。」   「そっか、まぁ良いけど。」    「と、言うか…駅に着いちゃいましたね。」   「そうだね。あっと言う間だったね。」   「確かにそうですね。」   「じゃ、私は電車だから。」    「はい。ではココで。」   「うん。お疲れ様。」   「お疲れ様です。」   「明日も来るのかな? …なら、また明日ね。」   「はい、行きますね。」   「じゃ…バイバイ。」   「はい、…気を付けて。」     人混みに消える女性を ずっと眺めてるオレ。   (行っちゃったか…。)   …そしてオレも 賑やかな夜の街の景色に溶け込んでゆく。
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