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「お疲れ様でした。」 バイトも終わり、オレは昨日と同じ様に対面の店へと入って行った。 雨が降ってるせいか、昨日よりは客が少ない。 (あの女性を見に来たけど、もし見付けたら話し掛けてみようかなぁ。 でも、何て話し掛け… 「いらっしゃいませ」 …てみよう。) 今日も、コノ店にしては浮き過ぎてるオレに接客してきたのは、 …あの女性だった。 「何かお探しですか?」 「あ、いや、ゴーグルを。」 唐突過ぎた瞬間に、オレはとまどいを隠せなかった。思考が間に合わない。 女性の問い掛けに答えたものの、次に何を言えば善いのか…。 「どぅゆう感じのですか?」 「いや…」 言葉が出て来ない。 「べ、別に善いんです。見に来ただけなので。」 「そぅですか。」 オレは不審がられない様にと、女性に背を向け、店内の商品を見渡しつつ、ゆっくりと出口へと向かう。 胸の鼓動が早過ぎる。 (今日は帰ろう。) そう結論を出し、店を出ようとした時、 「あの…。」 振り向いた視界に入ったのは、あの女性。 次に出て来た言葉は… 「向かいの店の方ですか?」 …だった。 「はい。」 オレは店先で、傘を開ながら答えた。 続けて女性は、 「やっぱそうですよね。 たまに見掛けるんで、顔は覚えてました。」 戸惑うオレを余所に、女性は笑顔で話し掛けて来た。 「…えっ?」 週末の土曜…、 雨が降る午後8時の出会い。
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