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それからも僕は毎日大きな木の下で彼女を待っていたけれど、彼女が来るのは1週間に1度になり、2,3週間に1度になり、とうとうやってこなくなった。
どうせ家に帰ったところでやることもない僕は、毎日そこに行っていた。彼女がきたらこんなことを話そうと考えたり、そこで宿題をやってみたりしていた。
それから半年ほど経ったある日、彼女は突然交通事故でこの世からいなくなった。
彼女がこの世からいなくなるなんて、僕はそんな状況信じられず、なんだか今にもまたひょっこり現れるような気がして、涙も出なかった。それからも毎日学校が終わったら大きな木の下に自然と向かってしまっていた。
もし彼女がきたときに話したいことを考え、もしくはいない彼女に向かって話しかけ、過ごした。その前の半年とそう変わらなかったからか、彼女がもう絶対に来ないなんて忘れてしまいそうだった。
それから半年ほど経った日、ちょうど彼女が来なくなってから1年が経った日だった。
僕はいつも通り大きな木の下で彼女を待っていた。
その日、彼女が1年ぶりにその場所にやって来た。まるで昨日も来たように自然に僕の前に。
「遅れてごめんね、待たせたかな」
僕たちは1年ぶりにこの場所で話した。1年分の間を埋めるように、とりとめのない、例えばこの漫画の最新刊が出たので明日貸すだとか、もうすぐ受験で勉強が大変だとか、そんな話だ。
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