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彼女はぽつりと「先輩と一緒にいる間もなんだか君のことが頭の片隅にあっていつも考えてしまってたの」と言った。
僕はいつのまにか泣いてしまっていた。そのままただ黙って泣いて、彼女も声を発さずに沈黙が辺りを包んだ。
しばらく時間が経ったあと彼女は立ち上がり、また明日ね、とさも昨日もそうしたかのように、いつも通り別れた。
気がつくと僕は大きな木の下で一人で座っていた。いつの間にか寝てしまったようだった。頬にはぬれた跡がある。
一人で待っている間に寝てしまったみたいだ。
大きな木の下で、僕は悲しい夢を見た。
もしかしたら、うれしい夢だったかもしれない。
流した涙は悲しい涙なのかもしれないし、うれし涙なのかもしれない。
僕にはよく分からなかった。
それでも、その日以降、僕は待つのをやめて、大きな木の下には行かなくなった。
それ以来その広場にはずっと近寄らなかったからか、いつのまにか思い出すことはほとんどなくなっていた。
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