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「またお会いしましたね。手塚国光」
木手はニタリとあやしく笑い、腕組みをしながらこちらを見てくる。
「さっきは私の完敗でした。また一から練習しないといけませんね」
人差し指の第二関節で眼鏡のつるを押し上げるという独特な方法で眼鏡を上げ、俺に歩み寄ってきた。
「何の用だ」
俺は眉間に皺を寄せて問いかけた。
今までのことを振り返ると、暴力を振るわれるのかと思い、多少の恐怖感を抱いていた。
「そんな顔しなくても。殴りはしませんよ。あ、図星でした?」
本当に図星だ。
何故わかる?
「貴方はいつもツンとしたお顔ですね」
「余計なお世話だ」
「そんなんじゃモテませんよ?」
「結構だ」
何で木手にそんなことを言われなきゃならないんだ。
「もしかして誰ともしたことがないんでしょう?私が教えてあげますよ」
スッと首の後ろに手を添えられた。
「離せっ!何する気だ」
やはり「殴らない」というのは嘘じゃないのか?
木手は信じがたい。
「本当に殴りはしませんよ、殴りは」
『殴りは』ってどういう意味だ……
間髪入れずに木手は俺の首を自分の方へ寄せて、唇を合わせてきた。
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