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それから約10分間、誰も口を開かなかった
まるで喉に空気の塊が詰まっているみたいに何も話せない
しかし、この沈黙を破ったのは扉の開く音…そして由紀本人だった
『お父さん…お母さん…』
そこにいる皆が由紀に目をやった
すかさず由紀のお母さんがこの空気をカバーする
『由紀…だめじゃない、ちゃんと寝てなきゃ…』
『いいの…話…全部聞こえてたから…後3時間なんでしょ?寿命』
誰もなにも言わない…言えるわけがない
本人と面と面向かって寿命が後3時間なんて言えるはずがない
だが由紀が続けて口を開く
『私の最初で最後の一生のお願い…聞いて?』
皆は大きく一回頷いた
由紀は2回ほど深呼吸してこれまでに見たことが無いくらいのとびっきりの笑顔でこう言った
『私…ウェディングドレスが着たい!そして……それを着て拓也と結婚したい!!』
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