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『なぁ…冗談だよなぁ!目を開けてくれよ…由紀!!』
いくら揺すってもいくら呼び掛けても由紀の目が開くことはない
そんなことはわかっているはずなのにずっと由紀の名を呼び続けた
『由紀…おい由紀ってば!!』
由紀の寝顔はとても穏やかな微笑みを浮かべていた
今にも起きてきて『嘘でした』とでも言いそうだ…いや、そうであってほしかった
でももう由紀の笑い声も泣き声も聞くことはできない
閉ざされてしまった口はもう二度と開くことはない
『嘘だって……言ってくれよ…』
堪えようのないほど溢れてくる涙
それを拭ってくれる由紀の小さくて温かい手はどんどん冷たくなっていった
ふいに誰かに背中を叩かれたような気がした
振り返るとそこには誰もいなかったが窓から見えた雪がまるで由紀でそれは俺に語りかけてるようだった
その時俺はこう聞こえた気がした
『バイバイは言わないよ…またね拓也♪』
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