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久し振りだ。
多分、小学5年生以来だ。
竹林がサワサワとなっている。
ばあちゃん家は、どういう訳か、いつでもこんなに清々しい。
ばあちゃん家につくと毎度決って、自転車を借りる。今回もそうした。
いつも学校行くのに、自転車使うじゃない
誰かがそう言ったように聞こえたが、別にどうでもよかった。
ぎこぎこぎこ…
自転車を力一杯こぐ。
初夏の風は、ワイシャツの隙間をぬって入り、高鳴ってくる呼吸やらといっしょにひゅうと過ぎてゆく。
坂を上りきって、ようやく自転車を降りると、そこにある東屋でフゥ、と長い息をはく。
どうが、しだのがいん?
汗かいてぇ
畑仕事をしてた名前も知らないおばさんがこの様子をみて、遠くから声をかけてくれた。
軽く頭を下げ、何でもないというように手を振ったりした。
うん、うん。
まだおばさん元気そうだったな
しばらくして
ぎこぎこぎこ…
来た道を引き返す。
あたりは程なく夕暮れ時
坂道を下る頃には、とんぼの群が世話しない道案内。
竹林はサワサワと哀愁の音を奏でる。
空を見る。
首元を冷たい風が通る。
雲が赤く白く、散らばっている
別に、急いでなんてない。
急いでる訳もない。
そして、あっという間に、ばあちゃん家についた。
ばあちゃん家からは、鈴虫の声と、あはは あははという声が聞こえて来た。
ふっ…と笑って、自転車を降りると、一目散に玄関をあけた。
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