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「どう、何か分かった」
香里奈が黙っている四人に訪ねる。
いや正確に言えば、なかなか口を開けることが出来なかったというべきか。
「………分からねえ。
この試合だけじゃ、相川の凄さなんか分かんねえよ」
慎吾がそう言うのも無理はない。
なぜなら相川の奪三振は一個のみ。特に誰も相川の球が打てなかったという様子ではなかった。
「………相川は三振を取る術だけでなく、打たせてるピッチングの術も持っている」
「!?そうなのか」
田口の言葉に全員が驚愕する。
「今日相川が放った球は全体的に変化量とキレが少ない。
その少ない変化量やキレに打ちゴロと騙され、手を出してしまえば、芯を外して打たせた打球は簡単にアウトになってしまう。
奴は元々そーいうピッチングをする奴なんだ。
三振を取ることに全力をかけず、勝つために最善な投球をする。
それが相川のピッチングスタイルの一つだ」
ケン、慎吾、香里奈は田口の話を聞いて驚きを隠せなかった。
やはり相川は天才だ。そう思い知らされた。
「やっぱり、相川はヤバいな…」
「本当に俺達と同じ高校生かよ………。
なあ、はじ…あれ??」
ケンは異変に気づく。
それはさっきまで隣にいたはずであるはじめの姿がなかったからだ。
「……あれぇぇ!?はじめはぁ!?」
「本当だ!!あいつ、どこ行きやがった!?」
ケンの言葉でみんなが慌て始める。
一体はじめはどこへ行ったのか。
「とっ、とにかく探すぞ!!はじめの野郎!!」
さっきまで冷静に試合観戦をしていた田口も一変、全員ではじめを探すことになった。
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