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「よし、なかなか仕上がってきているな」
その頃、試合を終えて帝陽高校は短めのミーティングが行われていた。
「選抜大会まであと少しだ。もちろん誰一人ベンチ入りは確保されていない。
ベンチ外だった奴にももちろんチャンスはある。
ぜひとも自分の力でレギュラーを掴み取れ!!」
「はいっ!!」
「それと相川、お前だけは残れ」
「………はい」
大沢監督に呼び出された相川だけを残して帝陽野球部全員は野球部専用バスに乗り込む。
「どうだ、調子は」
「まだ仕上がっているとは言い切れませんね」
「あれだけのピッチングを見せておいて、そんなことを言うか。
ったく、大した奴だ」
「監督、ただそれだけのために僕を呼んだんですか」
相川がそう言うと、大沢監督は真剣な顔つきで話し始めた。
「松本、最近あいつの様子を見てないんだが、どうだ」
「松本??なぜ僕に聞くんですか」
「あいつは二軍じゃ、誰ともまともに口を聞きやしない。
お前なら何か分かるかと…」
「…松本ならいつもどおり頑張っていますよ。
僕もあまり話をしないから詳しいことは知りませんが」
「………そうか。
それならよかった。そろそろあいつにも実戦経験を積ませてやりたいと思っていたところだからな」
相川の言葉に安心したのか、大沢監督の表情は明るかった。
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