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「久しぶりだな、田口」
季節は秋になり、夏の暑さも消えた十月。
少し肌寒いくらいの風が通る。
ついに今日という日がやってきた。
春の甲子園出場をかけた秋の地方大会。
ケン率いる新生かすみ野球部の初めての公式戦だ。
一回戦、相手は開坂高校。
私立高校で野球部は地元ではなかなかの実力を誇り、はじめ達もその高校の名前は知っていた。
だがはじめ達が知っていた理由はそれだけではなかった。
試合開始四十五分前のことだ。
田口は一人、トイレに向かった。
トイレを済まし、出た瞬間だった。
出来れば二度とは会いたくなかった顔がそこにいた。
田口自身嫌な予感はしていたが、まだ気づいてはいなかった。
そしてこの再会こそがかすみ野球部の全てを狂わす元凶であるということを。
田口は至って冷静を装ったつもりだった。
だが体は正直だった。
この震えそうな体も出てくる冷や汗も全て自分のものなのだ。
「なんで…お前がここにいるんだ…」
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