1331人が本棚に入れています
本棚に追加
パシッ!!
「ナイスキャッチ!!いいぞー、次!!」
話は秋の地方大会二週間前までにさかのぼる。
今日もかすみ野球部の練習の声がグランド中に響く。
キャプテンになったケンも堂々とした態度でチームメイト達を引っ張っていく。
「前田先輩、なんかキャプテンらしくなっちゃいましたね」
「ああ、ケンのくせに生意気だけど、らしくなったっちゃらしくなったな」
「………お前、もう少し素直に誉めてやるってことが出来ないのか」
そんなかすみ野球部の練習背景をはじめ、慎吾、一年生女子マネージャー・アスカがベンチで見守っている。
はじめと慎吾は今投げ込み途中の軽い休憩を挟み、アスカがいつものようにはじめのところへ来たというところだ。
「あ、あいつは少しばかり誉められると調子乗るからあんまり言わない方がいいんだよ」
はじめが違う方を向いて、あまり大きくない声で呟いた。
慎吾がすかさずツッコミを入れる。
「お前と一緒にすんな。あいつはもっとしっかりしてるわ」
「まあまあ金本先輩、これでも緒方先輩は前田先輩のことちゃんと思いやっているんですよ」
「あ、アスカちゃん!?」
「……ま、そういうことにしときますか」
慎吾は小さく笑い、立ち上がる。
はじめもそれに従い、アスカにタオルを渡した後、再び練習を再開した。
新生かすみ野球部になってからもう三ヶ月が経とうとしていた。
彼らはよりチームらしくなっている。
最初のコメントを投稿しよう!