1331人が本棚に入れています
本棚に追加
それから数日が経った頃、練習終わりのミーティングのことだった。
「みんな、ついに秋の地方大会が迫ってきた。
俺達新チームの最初の大会、そして今日ついに一回戦の相手が決まった」
キャプテンのケンがそう言った後、ケンは部員分コピーしたその対戦表を一部ずつ渡していった。
誰もがケンに渡されたその紙に釘付けになる。
「……開坂??」
一番最初に口を開いたのは、一年生で今でははじめの控えピッチャーの杉内だ。
この高校の名前を知らないのは、まだ転入して半年しか経っていない元帝陽高校の四番打者・花崎だけだ。
部員達はその高校の名前を聞いて少しざわつき始めた。
それも仕方のない話だった。開坂高校はこの辺じゃ、有名な高校だからだ。
だがこの高校の名を聞いた途端、はじめ、慎吾、田口、さらには水樹と香里奈までもが一瞬言葉を無くした。
キャプテンで対戦表を渡したケンも五人の顔を見て少し気まずそうな表情を浮かべていた。
「た、ターちゃん…」
はじめが対戦表から田口に目をやった。
田口はなかなか返事を返せずにいた。
「はい!!みんなもう対戦表はしまえ。
開坂は最近野球部がメキメキ力をつけてきた。
決して侮れない相手だということを忘れるな」
顧問・若松の低い声が響いた瞬間、部員達はみな若松に目線を向けた。
対戦表の紙はもうポケットにしまい込んだようだ。
最初のコメントを投稿しよう!