868人が本棚に入れています
本棚に追加
/73ページ
「へぇー、こんなトコあったんだ」
「俺のお気に入りの場所なんだ」
東屋に入りながら、彼がニッコリと笑う。
確かに東屋はちょうど日陰になっていて涼しいし、とっても静かな場所だ。
「で、わかんないとこってどこ?数学?」
そう聞きながら、彼と向かい合う位置に私は移動し、かばんを机に置く。
「えぇー?なんで隣に来てくれないのー?」
残念そうに彼が言う。
「ちょっと、一応彼女持ちなんだから。
ミオに言い付けちゃうよ?」
「だってー」
ハルキは、私の友達、ミオの彼氏さん。
いくら友達同士でもそれくらいは気にしないとね。
「俺、アユカの事好きだよ?」
時間が止まった気がした。
彼が身を乗り出して私の手に触れる。
私は動けない。
体が固まっちゃったみたい。
こんな時になんで?
「アユカは俺の事嫌い?」
彼の手が、私の手を包みこむ。
怖くて、逃げようとしたけど、やっぱり力じゃ勝てない。
両腕の間に顔を埋めて、それ以上聞かないようにする。
これ以上何も聞きたくない…
何も見たくないよ…
最初のコメントを投稿しよう!