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でも彼の言葉はようしゃなく耳に入ってくる。 「アユカ…大好きだよ…」 すぐそばで彼の声がした。 「な…いいだろ?…アユカ…」 寒気がした。 それが何を意味してるのか、私はわかったから。 「いや…やめてよ…離して…」 「やだよ…」 顔を上げて、でも絶対に彼の方を見ないようにして、私は手を振り払う。 急いで自分のかばんを手に取った。 だけど 「…待ってよ」 背後から抱きしめられた。 「…っ!…離して…!」 「いやだ…俺…アユカがほしい…」 ぐるんと体を回されて、彼と向き合うかっこうになる。 彼はそのまま私を抱きしめた。 「…アユカ…俺のものになって…? …俺の女に…」 私はうつむいたまま彼の腕の中で暴れた。 「…やめろよっ…離せっ…」 いくら押しても、彼はびくともしない。 なんで? なんで私を好きなんて言うの? ハルキはミオが好きなんじゃないの? 腕の力は緩まない。 私が疲れて暴れるのを一瞬止めた時、彼の手が私のあごをとった。 予感っていうより、確信。 キスされる。 私は必死で抵抗した。 でもそれ以上の力で無理矢理上を向かされる。
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