3人が本棚に入れています
本棚に追加
空を見上げると、先ほどまでの雲一つ無い快晴が嘘のように無くなり、薄黒い雨雲が空一面に広がっていた。
少年は一つ、理解する。
この雨は、飛房の涙だと。少年が泣いてしまえば、飛房も泣く。少年が怒ってしまえば、飛房も怒る。少年が笑えば、飛房も笑う。
少年は一つ、納得する。
人犬一体のように、一つの紐で結ばれているのだと……。
少年は涙を拭い、笑顔で飛房と向き合う。
ぱらぱらと降っていた小雨が勢いを増し、土砂降りへと変わって行く。
「泣かないでよ、飛房」
雨の音に声が消されてしまっても、少年は叫んだ。叫ばずにはいられなかった。すると、雨の音に紛れて『違うよ』と言う言葉が耳を掠めた。
「え、違う? じゃあ、嬉し泣きだ」
少年がニッコリと笑ってそう言うと、瞳の中に飛房の姿が、ぼんやりと焼き付いた。
『ありがとう』
その瞬間、土砂降りだった雨の音が、何かに操られたように消えた。しかし、雨はたしかに、降っていた。天から降る雨粒が、体に当たる衝撃を、少年はたしかに感じていた。
「飛房」
少年に迷いはなかった。眼の前にあるモノ、眼に映るモノ、それが飛房であると言う事を、少年の細胞が感じていた。
最初のコメントを投稿しよう!