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慶も二人につられるように体育館の出口へと向かった
それに気付いた人間はごくわずかだろう
それに気付いたとしても今気にすることではない
慶は人波をかき分けるようにして出口へと辿り着いた
体育館の外へ出たがそこに二人組の姿はない
どこに行ったかも分からなければ、誰だったかも全く分からない
「……期待しすぎかな」
慶が体育館に戻ろうとした時、廊下の向こう側に見慣れた人が通るのが見えた
慶はその人物のもとへと走る
「……沙羅さん!」
自分の名前を呼ばれた沙羅は驚いた様子で振り返った
しかし、次の瞬間にはいつもの沙羅に戻っていた
「あら?どうしたんですの?」
「いや、あの……沙羅さんが見えたんで」
「ふふ…体育館にいたのに私が見えたんですの?」
沙羅はクスッと笑ってみせた
「えっと……沙羅さんは何でこんなとこに?」
慶は無理矢理話を変えてみた
「…文化祭を楽しんでましたの」
「でも今日営業してるとこなんて少ないんじゃありません?」
「そうですわねぇ…でも雰囲気は楽しめましたわ」
沙羅は哀しそうな表情を見せ、歩きだした
慶は二歩ぐらい後ろをついていく
「ほらでも明日、俺達やることないからいくらでも…」
「私、明日は参加しませんの」
慶の位置からは沙羅の顔が見えないが、またあの哀しい表情をしているのがわかった
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