姫と騎士

5/8
前へ
/35ページ
次へ
「そうは言ってもお見合いをするか、誰かを紹介するかでもしなきゃお父様はきっと納得しませんわ」 「約束してたわけじゃないんですよね?」 「それはそうですけど…」   「じゃあ大丈夫です。文化祭に行きましょう!」 沙羅から力の無い笑みが零れる 「ありがとう…でも無理なのは私が一番分かってますの。きっと父は無理矢理にでも…」 「大丈夫と言ったら大丈夫です」 「一体何を根拠に?」 沙羅はとても冷静だった その冷静さはきっと諦めからくるものなのだろう しかし慶もまた冷静だった 「俺が守ります」 慶の冷静さは自信の表れだった 「……もし守れなかったら?」 「その時は沙羅さんが卒業するまで、昼飯奢りますよ」 慶は笑いながら言った 「……お父様には優秀な執事がついてます。逃げ回るのは不可能ですわよ?」 「沙羅さんにはさらに優秀な人間がつきます」 「…はぁ」   沙羅の口からため息が漏れる しばらく沈黙が流れた 「仕方ありませんわね…私、分の悪い賭けはしたくないんですけど…」 沙羅は手を差し出す 「やるからには勝たないと気が済みませんの」 慶は沙羅の手を握り返す 「任せてください」 慶の目に映った沙羅の笑顔はとても美しかった
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

356人が本棚に入れています
本棚に追加