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「そうは言ってもお見合いをするか、誰かを紹介するかでもしなきゃお父様はきっと納得しませんわ」
「約束してたわけじゃないんですよね?」
「それはそうですけど…」
「じゃあ大丈夫です。文化祭に行きましょう!」
沙羅から力の無い笑みが零れる
「ありがとう…でも無理なのは私が一番分かってますの。きっと父は無理矢理にでも…」
「大丈夫と言ったら大丈夫です」
「一体何を根拠に?」
沙羅はとても冷静だった
その冷静さはきっと諦めからくるものなのだろう
しかし慶もまた冷静だった
「俺が守ります」
慶の冷静さは自信の表れだった
「……もし守れなかったら?」
「その時は沙羅さんが卒業するまで、昼飯奢りますよ」
慶は笑いながら言った
「……お父様には優秀な執事がついてます。逃げ回るのは不可能ですわよ?」
「沙羅さんにはさらに優秀な人間がつきます」
「…はぁ」
沙羅の口からため息が漏れる
しばらく沈黙が流れた
「仕方ありませんわね…私、分の悪い賭けはしたくないんですけど…」
沙羅は手を差し出す
「やるからには勝たないと気が済みませんの」
慶は沙羅の手を握り返す
「任せてください」
慶の目に映った沙羅の笑顔はとても美しかった
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