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「未来というのは気体のようなものだ。」
そう言って学者のような友人は組んでいた腕を大きく広げて大仰に言った。
「不確定要素という極小の粒が少しの《動き》で変形、いや《変位》すると言ったほうがいいな、その様はまるで気体のようではないか。ならば詰まる所することのない過去は固体、過去と未来の間である現在は液体と言った所か。」
そして、学者のような友人は広げた腕をまた組直した。
いつも思うことだがコイツはじっとして喋ることができないのか?
「お前のその眼はまだ不確定要素の《位置》を見極め、その《位置》においてそれが固体へと凝固した場合の《位置》を見ることができる。つまり、お前には《その時》最もなる確率が高かった《現在》を変えることが可能ということだ。ただ、変えた結果である《過去》がどうなるかは分からないのが痛いトコだがな」
学者のような友人は組んでいた腕をまた広げて肩をすくめた。
本当に腕が忙しい奴だ。口もだが。
俺は長ったらしい台詞をいい終えた学者的友人に心底からの溜息をプレゼントした。
「お前はどうしてそう小難しく言うかなぁ…。」
俺は呆れ切った顔をしてバッサリとコイツの長ったらしい台詞を要約する。
「“お前には未来が見える“って言えばいいじゃん。」
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