浮世離れ

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それは何と呼ぶ? 綺麗な湖の水面を覗き込めば、自然と顔がそれに映る。綺麗な透明な世界に、酷く色鮮やかで極彩色なものを投げ入れた様に。その水面は、波紋では無く苛立ちや憎しみを構成する。水面に映るそれは、脳内で無意識に彼のそれへと描き換えられ、目を通して脳が受け取る筈の映像ではなく、仮の偽造されたものへと瞬時に望まずとも変化してしまうからだ。 何故、それが苛立ちや憎しみの構成へと繋がるのか。それは、水面が見せている彼のそれは、自分が彼自身に対してそれらの負の感情を抱いているからという、明白で分かりやすい理由だからである。それ以外の何かでは例えようの無いものである。 誰が理解してくれよう?自分の心の内を。いや、一人居た。気付けば、視界に入っていた彼だ。 でも、自分は彼を必要としていない。彼を望んではいない。自分が体裁でも本当に必要と思ったあの人を奪ったから。意図的なものか、否か、その真偽は知らないが。 兎にも角にも、彼とあの人が釣り合う磁石の様な関係で居るのは、癪だ。これっぽっちも彼に対し願望など無いのに、何故この目の視界は彼を映すことしか知らない?彼を消すことくらい、考えれば出来ること。 出来ないのは彼を羨んでいるからと、誰か教えてくれ。 心の底でもそんなことを叫べず、僕は視界に映る彼の上に飛び込んだ。
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