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まあそんな話もあるってことで、少年は視界を外の景色から車内に移した。
「……」
すると、さっきからチラチラと車のバックミラーで、少年を見ている運転手に気づいた。
少年の顔は、白い髪が肩から少し下に伸びたくらいの長さ、整った顔立ちは幼さは残るも、かなりの美男子だ。
最初、少年は運転手が自分の顔を見ていると思ったが、バックミラーで見ている運転手の視界を追ってみると、運転手は顔より下の方を見ていた。
「何か気になるか?」
「えっ?」
いきなりの少年の呼び掛けに少し慌てた運転手。
「さっきから、俺の方をチラチラ盗み見みしてたろ?」
「あ、ああ…いや…あんちゃん、暑くないのかな~って思ってな」
今は六月初夏。
ほとんどの人が半袖で涼しい格好をしているのに対して、少年はねずみ色の長ズボンに、見ているほうが暑くなりそうな黒いコートを着ていた。
「別に暑くはねぇよ。
それより、あんたがさっきから気になってんのは……これだろ?」
荷物と一緒に車に乗せたそれは……刀だった。
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