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神と呼ばれるものから言われた通りに、人々は痣のある者から血を集めた。
だが、壺いっぱいに血を集めるには、まったくと言っていいほど、血が足りなかった。
そんな状況に立たされた人々は、狂気に走った。
痣のある者を次々に殺し、その死体から、一滴も残さず血を絞り取った。
そして、ついに壺を血でいっぱいにすることができた。
早くその壺を持っていこうとした時、どこから現れたのかわからない、一人の男が人々に言ったのだ。
「その血で満たした壺を持っていこうと、この病は治らない。渡すだけ無駄なことだ」
何かを知っているような言い方をする男の腰には、ボロボロの包帯で巻かれた、刀があった。
だが、狂気に走った人々には、刀は目に入らず、その男の言葉も聞かず、壺を神のもとに持っていった。
「壺を血で満たしたか?」
人々は、神の前に壺を出した。
「ついに、この時が来たか」
これで病は治る。そう信じていた人々の前で、神は笑った。
「愚かな人間が。
不治の病など、はじめから存在せぬわ」
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