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最初、何を言われたのか理解できなかった人々は、目の前でおきている状況を疑った。
自分たちが神と崇めていたものが、人々が必死になって集めた血の入った壺を持ち上げ、それを口にした。
壺の中に入っている血を一滴残さず飲み干した神は、その異様なほどに姿が変わった。
その姿は、人々がまるで害虫とも思えるほど巨大で、天を覆い尽くすその姿は……龍。
人が逆らえるような存在ではない、圧倒的なその存在感。
「愚かなる人間どもに、我が裁きを下す」
人々は絶望にうちひしがれた。
だが、全人類があきられたわけではなかった。
絶望にうちひしがれている人々の前に現れたのは、ボロボロの包帯を刀に巻いている、あの男だった。
「貴様は、何だ?」
異質なものを見たように言った龍に、男は微笑で答えた。
「お前の…敵だ!」
刀を抜き放ち、猛然と龍に立ち向かった。
絶望した人々には、なんて無謀な男だ、そう思った。
だが、男は殺されるどころか、龍と互角に戦い合っていた。
戦いは数時間にも及び、両者にも疲れが出てきた。
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