問題発生

2/2
11人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
「聞いてくれよ! 俺の部屋幽霊が出るんだ!!」 「はぁ? ユーレイ?」  とある大学の食堂にて、江町鷹人(えまち たかと)は友人に宣言した。特にこれといった特徴もない、どこにでもいそうな平凡な青年だ。対する友人も、鷹人とそう変わらない。 「マジだって、マジマジ。はじめて見たときからボロアパートだと思ってはいたけどまさかあんなのが出るなんて……」 「あ~、出たってジジイかババアの?」  呆れ半分で尋ねる友人に、鷹人は右指を突きつけた。 「それがさ、声だけするんだよ。夜中頃になるとどこからともなく『出ていけ~、ここは俺の部屋だ~』っておっさんの声で……」 「声だけなら出てないじゃん」  友人は冷静にツッこむが、鷹人は高速で首を左右に振った。 「声がする時点でなんかいるってことだろうが!! お前んなことも分からんのか!?」 「知るか、んなもん」 「あぁ……声が聞こえるようになって早五日。出て行きたいけどあそこまで安い部屋は滅多にないからな……」  頭を抱えて小さく震える鷹人を見て、友人は「名前に鷹とか入ってるくせに臆病だよな……」と思った。あえて言わないのは一応友達だからだろう。 「安いって……お前の部屋って月いくらだっけ?」 「月一万。二畳半に台所とトイレのみ」 「確かに安いな。んで収入は?」 「造花のバイトで月七万」 「それじゃあ出ていけねーな」  鷹人は頭を抱えてうな垂れた。 「……そういえば前に『心霊現象に関する調査引き受けます』って書いてあったチラシ見たぞ」 「ほっ、本当か!?」  飛びつかんばかりの勢いで鷹人は友人に詰め寄った。 「あっ、あぁ。確か……町外れのなんとかって探偵が引きうけてるらしい」 「友よ! 貴重な情報をありがとう!!」  鷹人は涙を流しながら抱きついた。 「いや、別にいいさ……」  友人としては、これ以上騒いで周囲から迷惑そうな目で見られなくなかったから適当に教えたのだが……。 「そうとなれば善は急げだ! 今すぐ行ってくるぜ!!」 「おい、午後の授業はどうするんだよ!?」 「んなもん自主休校だ!!」  何が嬉しいのか、高らかに笑いながら鷹人は去っていった。  友人は一応、ありのままを授業担当教諭に告げることにした。目に見えて「サボった」ということになりそうだが……。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!