3/3
前へ
/3ページ
次へ
表面はただの教室。その奥に準備室の小さなドアがある。 一昨年の夏、改装工事で塗り替えられた真新しく白い壁の端に、取って付けた様な古くて黄ばんだドアは目立つ。 その目の前まで来て、数人の生徒たちは立ち止まった。 しんとした特別教室棟の、科学の授業でさえ滅多に立ち入らない三階の実験室前には人が少ない。   「おい、お前がやるんだろ?」   その生徒は後ろにいた同級生に背中を押されて、崩れたバランスを取るために一歩前に出た。 別段怖くもない。その生徒は、短く返事をして、強く引っ張ると取れてしまいそうなドアノブに触れた。 その瞬間。   ギィィィ…‥   「嘘だろ、勝手に開いたぜ」   「え、だってここ…鍵開いてないんだろ?前に度胸試しに開けようとした奴が、結局開かなかったとか言ってたし」   「あ、中はただの物置じゃん」   ひんやりとしている内部。光はあまりない。 教師用の机には、十年以上前のものと思われる教材と、薬品、フラスコなどが乱雑に置いてあった。   「すげー、かなり古いな」   さして不気味でもない雰囲気に安心し、その数人の生徒達は中に入って物色し始めた。 一人を除いて─―…。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加