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「ど……どういう……」
「も、桃から出たのかい……!?」
そう言いながらも、早乃は手拭いを持ってきてその子を包み、抱いて海児に振り向いた。
「……お前、まさか」
「こんな偶然が、二度も重なるわけない。これはきっと神様からの贈り物さね。……育てるよ、アタシは。いいかい、アンタ」
早乃の言葉にため息をつき、海児は彼女に背を向ける。
「……バカ野郎。そんじゃ、俺は今まで以上に稼がなきゃならねえじゃねえか。とても竹切りだけじゃ食わせていけねぇ」
早乃が顔を曇らせる。海児は口元に諦めたような笑みを浮かべながら男の子の元へ歩み寄り、その頭を撫でた。
「……仕方ねえ。引退した身だが、もう一度復帰するか。『村守』に」
「え……!?」
早乃の顔色が変わる。そんな彼女を尻目に、海児は手拭いを手に取り、玄関へ立った。
「『村守』の再登録をしてくる。ちゃんと世話してろよ」
「…………大丈夫、なのかい?」
「俺を誰だと思ってる?『怪人の海児』だぞ」
両目をバチンとつぶり、彼は歩いていった。
「……ヘタクソなんだよ、ウインクが。大体怪人の海児なんて、バカにされてただけじゃないか」
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