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豪雨の夜。けたたましいほどの雨音に、逃げ惑う人々の声すら僅かにしか届かない。
「き、来たぞぉぉぉ!!」
「鬼どもだぁぁぁ!!」
闇夜に響く叫び声と共に、村人達が一塊となって動き出した。海児は刀を手に、村人を避難場所へと誘導していく。
「ふんばれよ!! あそこにさえ着きゃ後は安心だ!! 騒ぐんじゃねえ、こっちだ!!」
雨で視界が悪く、目の前さえよく見えない。海児は舌打ちをしながら、記憶を頼りに避難場所として設けてある家屋へと近づいていく。
――――狂気じみた雄叫びが、皆を導く海児の頭に響き渡った。
(見つかった!!)
真っ赤に染まった目に、赤く硬質化した皮膚。歯は鋭く尖り、髪は全て白髪の異様な姿。
それがこの鬼月村に現れる化け物、『鬼』だ。
「ちっ……」
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