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――――寸前。
雨の降り注ぐ中、一筋の光が鬼に向かって放たれた。
鬼の顔が痛みと苦痛に歪む。海児は好機得たりとばかりに鬼の目をめがけて刀を突き立てた。
黒い血がほとばしり、鬼が断末魔の声をあげて倒れ伏す。海児の顔に吹き付けられた黒血が、雨で流れ落ちていく。
「……来るのが遅いぞ、早乃」
茂みから現れた妻に小言を吐きながら、海児も刀を収める。
「心配するなって言ったのはどこの誰だい、全く。ちょっと動いただけでもうゼーゼー言ってるじゃないか。歳なんだよ、歳」
「へっ……余計なお世話だ」
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