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早乃はため息をつきながら火弓を下ろし、海児に歩みよった。まだ村のあちらこちらから、人々の悲鳴や建物の崩れる音が聞こえてくる。
「最近、やけに鬼の襲撃が多くないかい? 今までは半月に一度あるかないかだったのに……」
「ああ。でも、今はそんなことはいい。とりあえず移動だ、いつもの場所に……」
安心しきっていた二人の背に、化け物の金切り声が降りかかる。
叫び声が聞こえるのは、周りの茂みの中。彼らが背中合わせに構えた時を見計らったかのように、複数の鬼が次々と姿を現した。
「アンタ、鬼が――――!!」
「わかっとる!! 早乃、村人達とあの場所に行け! 俺も鬼どもをやった後に」
「ふざけたこと言ってんじゃない!! アンタ一人でこの人数相手にやろうって――――」
鬼達が、一斉に二人へ襲いかかった時。茂みから、もう一つの影が飛び出した。
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